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「……美術の河居ちゃんって、女に乱暴働くようなキャラだったかな?」
首を傾げる類に、ヒナは怒りのまま口を開く。
「私もそんな風に思ったことなかったっ。河居先生がそんなことするなんて……信じられない、信じたくないよ。でも、私、見ちゃったんだもん! 嫌がるリンさんの上にのっかってた……リンさん、すごい嫌がってた、怖がって泣いてたんだよ! 絶対許せない!」
興奮冷めやらぬヒナを落ち着かせるために、類は宥めるようにしてよしよしと彼女の頭を撫でた。
「よく知らせてくれたな。ヒナは偉い、偉い」
類は常にない優しい声で慰めの言葉をヒナに紡ぐ。
ヒナは不安に揺れる瞳を類に向け、口籠もりながら問うた。
「リンさん、大丈夫だよね? すみちゃん行ってくれたから、もう大丈夫なんだよね?」
「ああ、あいつ、普段はふにゃふにゃな軟体動物野郎だけど、いざとなったら頼りになる。喧嘩もあり得ねえほど強いし」
「うん、うん、そうだよね、大丈夫だよね」
ヒナは安心したように、唇を小さく綻ばせた。
「ほら、これ使え」
そう言って、類はハンカチをヒナに渡した。
ヒナはそれを受け取ると、涙でぐしゃぐしゃになった顔をおずおずと拭う。
「……類ちゃん、ありがと。洗って返すね」
熱を持ち腫れぼったくなってしまった目を上げて、ヒナは類に礼を言った。
「お、おう」
うっすらと目尻を赤く染めた類は、恥ずかしげに頭をガシガシ掻きながら、ヒナにぶっきらぼうな返事を返した。
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