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類はヒナに張り付く樹の腕を掴み、グイッと引き寄せると、ヒナには聞こえないよう声を潜め問い質す。
「……こんのガキッ。お前、ヒナにキスマーク付けただろ!?」
余裕のない類の声に、樹は面白そうに片目を細め、クッと口角をつり上げた。
「だったらなに? ヒナはボクのものだ。アンタ、ヒナが好きなの?」
樹の言葉に、類は声を失い瞠目する。
「なに? アンタ、顔真っ赤だよ。そんなに好きなの、ヒナのことが。……ふうん、そう。だったらアンタはボクの敵だ。……覚悟しな」
強く昏い光が浮かぶ目で樹は類を見据え、黒く澱んだ感情を声に乗せて恫喝する。
類は掴んだ樹の腕を叩きつけるように振り払うと、怒りを露わに声を張り上げた。
「ああ!? ふざけんなよテメエ!」
ビリッと突き刺さるような類の怒号に、ヒナは飛び上がって驚いた。自分から距離を取るようにして話す二人の元へ慌てて駆け寄っていく。
「類ちゃん、樹くん、なに!? けんかしてるの!? 類ちゃん、樹くん賢いから、口げんかしてもみんな負けちゃうんだからね。樹くんイジメたら許さない! それに樹くん、IQが190以上もあるから、類ちゃんなんて絶対に敵わないんだから」
樹を庇うようにして自分の背中へと隠したヒナは、目尻をつり上げて「樹くんをいじめるな」と類を睨みつける。
「俺は何もしてない!」と叫ぶ類に、ヒナの後ろから樹は「べーっ」と舌を出す。
イラッと顔を引き攣らせた類は、チッと鋭い舌打ちを鳴らした。
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