~序章・悪魔との出会い~

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~序章・悪魔との出会い~

「アンタ、バカじゃないの」  侮蔑の混じるその声に、今泉陽菜(いまいずみ ひな)は俯せのまま顔を上げた。  冷然と見下ろすのは、白いポロシャツに半ズボンを履いた幼稚園児だった。  ――――うわあ、か、可愛い……っ!  お人形さんみたいに可愛らしい。  それが、彼の第一印象。  ヒナがじっと見つめていたら、幼児の吊り目がちな大きな双眸が不快げに歪められた。 「なにボケっとしてんのさ。さっさと起き上がったら? パンツ丸見えだよ。ウサギの。ダッサ」  嘲笑うような表情だったが、ヒナは彼のあまりの可愛らしさから目が離せなくて。 「アンタ、アホなのトロいのどっち? ……ああ、どっちも変わらないか」  クスッと笑われてしまい、ガバッと身体を起こした。  慌てて体勢を立て直し、めくれ上がったスカートを手でパパッと下ろす。 「へへ、すっころんじゃった」 「うん。何もないところで、見事にすっころんでたよね。――――しかも、起き上がりもせず、じっとしたまま笑ってたし」  自分を見上げる幼児の目には、未知なるモノを見るような興味と、ほんの少しの警戒がせめぎ合っているように、ヒナには見えた。 「ふふっ、だっておもしろかったんだもん。今日なんどめかなって思ったら」  彼の目が、「コイツは本物のバカだ」と、信じられないモノを見るように大きく見開かれる。
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