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大切な人と自分の心をズタズタに切り裂いた卒業式の日。
アメリカでデザインの勉強をしたいと言っていた彼の夢を守りたかったから。
いつも隣にいてくれた彼がいなくなる恐怖を1人で耐える自信が無くて、繋がったままでは暗闇に飲み込まれてしまいそうで。
断ち切ることでしか彼の背中を押してあげることができなかった。
あの日から3年の月日が経とうとしている。
目的も無く入った短大を卒業し、今はバイトを掛け持ちしている一端のフリーター。
息つく暇なく働けば振り切れると思っていた。
どこまでもついてくる『思い出』を。
いつかは見つけられると自分に言い聞かせた。
彼にはあって、私には無い『夢』を。
なのに、心にできた隙間は小さくなるどころか大きくなるばかり。
夜遅く終わったバイトの帰り道。
彼と語り明かしたファミレスの前を通るたびに鮮やかになる記憶。
容易く消えないからこそ言ってしまったんだ。
「大嫌い」と……
あの時の彼の悲しそうな目は私への戒め。
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