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「そんなに緊張しないでよ」
目の前に美味しそうな料理が並んでいるのに全くと言っていいほど箸が進まない私を見て、宮本さんはグラスを口元まで運びながら苦笑する。
「……ごめんなさい」
彼の気遣いに上手く応えられなくて、思わず謝ってしまった。
次の瞬間には彼の小さなため息が聞こえた。
「それは……この前の返事と受け取っていいのかな?」
「えっ……?」
思いがけない解釈に顔を上げると、彼の顔は眉を下げて寂しそうに笑っている。
さっきの謝罪はあくまで私の不甲斐なさに対してだったけれど、これから再び彼に謝らなければならないことを思うと、易々と楽な道へ逃げてしまった。
「……はい」
果てしなく嫌な人間だ、私。
こんな自分のことを「好きだ」と言ってくれた人を傷つけて、自分が傷つかない方法を選んで。
何も前に進めてないくせに、進んだふりして2度と傷つきたくないと偉ぶって。
「仕事、辞めないでね?」
優しい言葉に泣きそうになって、簡単にその厚意にすがる。
こんな私に誰かを好きになる資格は無いんだ。
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