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帰り道、宮本さんの申し出を断って1人、自宅とは逆の方向へと向かう。
どうにも『自分』という人間が嫌になった時は決まって向かう場所。
そこで叩きのめされて、そうして次の日から図太さに磨きをかけて歩き出す。
あの日から幾度となく繰り返してきた鍛練の場所。
途中、私が『師匠』と崇める人物に連絡を入れる。
彼女は大きなため息をつきながらも、訪問を許可してくれた。
この場所が無ければ私はとっくに根元から腐っていただろう。
どんなに強烈な修行が待っていようとも、それにさえすがりつきたくなる心境は自分でも理解し難い。
全てを放り出すこともできずに、不様に足掻き続けることでしか生きていく術を見つけられずいる私には、その道しか残されていない。
自分を守るために誰かを傷つけることしかできない。
そんな自分を肯定する方法を手探りで探している。
自分から手離したものは2度と戻らないと知っているから。
どんなに綺麗事を並べても許されない罪は世の中に数え切れないほどある。
その中の1つを私は犯したから。
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