三日月を抱く乙女

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始まりの書 ~カインとアベル~ 旧約聖書より創世記4-2 ノド書より  楽園を追放されたアダムとエヴァ(イヴ)は、二人の息子をもうけた。  兄をカイン、弟をアベルと名付けた。  アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。  時を経て、カインは土の実りを主の元に献(ささ)げ物として持って来た。  アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。  主はアベルとその捧げ物には目を留められたが、カインの献げ物には目を留められなかった。  カインは激しく怒りアベルに嫉妬した。  そして、二人が野原に着いた時、カインは弟アベルを殺した。  主は言った。 「今、お前は呪われる者となった。お前は地上を彷徨い、さすらう者となる」  流浪の身となったカインは、孤独の中、ノドの地へと行き着いた。  ある夜、大天使ミカエルが現れた。  彼は問うた。 「アダムとエヴァの息子よ。己が犯した罪を悔い改め、父の慈悲に身を委ねて罪をすすがぬか?」  カインは答えた。 「《天に在す主》の慈悲によってではなく、私自身の慈悲によって、私は生きるだろう、誇りを持って」  次に、ラファエルが現れ、問うた。 「カインよ、汝の弟アベルは汝の罪を赦した。悔い改め、全能なる御方の慈悲を受け入れぬか?」  カインは答えた。 「弟アベルの赦しによってではなく、私自身の赦しによって、私は赦されるだろう」
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