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リリィが俺の服の裾を掴む。これも離れないようにする為なのか、それとも魔法の為か。とりあえず抵抗はしない。その状態のままリリィは何やら唱え始める。俺の分からない言葉だ。ただミカエルが門を開ける時に使っていた言葉に似ている気がする。本当にそうなのかは分からないけど。途中何度か間を開けながら、リリィは何度か違う文言を唱えた。
「これで良し。じゃあ行こうか」
リリィの言葉に俺はゆっくり足を進める。リリィが俺の服の裾を掴んだままなのはやっぱりそれが必要だからなんだろうと認識して気にしない。俺の服の裾を掴んだままのリリィは俺のすぐ後ろを着いてくる。
数歩進むと一気に景色が変わった。開けていたはずの景色は周りを大きな岩に囲まれ、谷底のような場所に出る。天界に行く時もそうだったけど、変わった瞬間の感覚はない。門の下を通り抜けた時、急に変わったとしか言いようがない感じだ。俺はさらに数歩分進んで足を止める。
多少開けていて、かつ月明かりもあるからか周りの景色は見える。谷底から伸びる道は一本しかない。兄貴達はこっちに進んだんだろか。
「兄貴達の場所は調べられるか?」
結局ここでもリリィの力を頼るしかない。さっき他の魔法は使えないって言ってたけどあの調べるのも魔法だったりするんだろうか。
「それは一人で入った時にやっておいたよ。こっち」
リリィは俺の裾を掴んでいない方の手で方角を指差す。それは今越えてきた門の方を指差していた。門は崖にある扉のように存在している。門の向こう側って事はないだろうからこの崖の先にいるって事なんだろうな。
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