視線に気付いて

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久しぶりに、見た。 栄えてないわけじゃないのに、どこかのどかな町並み。 三年間毎日通った道を歩き、懐かしさに心が浮き立つ。 エンジ色のチェックスカートを翻しながら高い声で笑い合う彼女たちを見ると顔が綻ぶ。 今から渋谷かな、それとも原宿かな。 お気に入りの制服を着て、一時間かけてどこに行こうか考える。 楽しかった記憶を思い出しながら扉をガラリと開けた。 「たっちゃん、こんにちは!!」 講師室で一人いつものようにパソコンに向かっている、その人に大声で呼びかける。 びくっと体を跳ねさせ、弾みでずれた眼鏡をかけ直しながらこっちを向いたたっちゃん。 口があんぐりと開いている。
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