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遠くに聞こえていた車の音や、公園で騒ぐ人の声が聞こえなくなった。
聞こえるのは、その時を待つ不安な鼓動の音。
「出会ってから色々あったけど、一緒に毎日笑って、バカなこともして、すごく楽しかった」
「うん」
彼も今までを辿るようなことを言うから、涙が止まらなくなる。世界で1番大好きな人が、もうこんなふうに抱きしめてくれなくなってしまうと思ったら、自然とピーコートを握りしめていた。
「出会えてよかったって、本当に思うよ」
「うん……」
もう終わり……なの?夏にした約束は叶わないまま、離れ離れになっちゃうの?
まだ大好きなのに……嫌いになんてなれないし、忘れることもできないのに。
「だから、これからもたくさん思い出増やして、いつか立派な医者になる」
言われたことを理解しようと見上げたら、凛とした冬空から舞い落ちる雪と、優しく微笑む宮崎くんと目が合った。
「つらい思いさせちゃってごめんね。俺は、莉緒とずっと一緒にいるよ」
言葉が声にならなくて、私も、世界で1番大好きって言いたいのに、言えなくなった。
背伸びをして彼の首筋に顔を寄せると、大好きなライトブルーの香りが私の身体を満たしてくれた。
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