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「ちょっと待ってよー!」
先に走っていく彼の背中を追いかけて、私も一生懸命走る。細かい白砂がコンバースの中に入ってくるけど気にならない解放感だ。
「あー、やっぱりやった。ほら、これ履きな」
彼の足跡が砂浜に残って、私の足跡は、いつもより大きい。
「綺麗な夕日だね」
座って見つめる水平線。オレンジが穏やかに、ゆっくりのんびり沈んでいく。
「なんか美味しそうな色」
「食べられないよ」
「いいよ、俺はこっち食べるから」
不意に重ねられたキス。まぶたの裏が夕焼けのオレンジで温かくにじんだ。
楽しかった夏の記憶は、部屋の写真立てに飾った。これからも2人の思い出を増やせたらいいな。
夏の夜風が、そよそよと窓から入る。
写真立ての横に置いた、四つ折りの白い紙が、ひらひらと舞った。
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