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「大翔のバカっ!」
「なっ…。」
振られた挙句にバカとまで言われて、余計に彼女のことが分からなくなる。
「どうして勝手に日本に帰るって決めたの?もう会えなくなるなんて言わないでよ。」
勝手なのはお互い様じゃん。
俺がどうするか相談していたら、ちひろの気持ちは傾いたのか?
結局諦められずに苦しくて切ないのに。
「ごめん、もう行かないと間に合わなくなるから…。」
俺を引っ張るちひろの手を振りほどいて、背を向けた。
「じゃ、行ってきます。」
母親は特に大きく表情を変えることなく見送ってくれているけれど、朝陽は難しそうな顔のまま、手を振っている。
「ちひろ!」
搭乗口を抜けて、彼女の名を叫んだ。空港に響き渡るほどの大きな声で。
「俺は、諦めないから!まだお前のこと好きだからな!」
見送りに来て、泣きながら話した彼女の気持ちが、いま誰に向いているかなんて分からないけれど。
少しでも俺と離れることが寂しくて泣いてくれたのだとしたら、もう1回くらい振られてもいいかなって思ったんだ。
日本に行っても、俺はちひろのことが好き。
俺にだけ、ワガママになる彼女のことを分かってあげたい。
もう泣かなくて済むように、いつの日か俺が守ってあげたいと思う。
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