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「でもさー、なんかダメなんだよなー」  紙袋から雑巾を出して、毛むくじゃらの肉塊に被せ、雑巾の上から肉塊を持ち上げて紙袋にしまう。すっかり手慣れたもんだ。 「なんての? 物足りないってやつか?」  濃い緑色に、守られるように囲われ、ヌクヌクと咲きやがる紫の花。踏みつけたらあっという間にグシャグシャになる、脆くて弱っちい花弁を微塵のためらいもなく悠々と広げ、まるで嘲笑うかのように俺の手から、何度も何度も何度もするりと抜けていく、性悪な、あの、小さな小さな紫の……。  変な音がした。  見ると、ガキが呻きながら立ち上がろうともがいている。  そういえば、と俺は不快なことを思い出した。あの時、勝手に俺の“安全地帯”で喚いていた女、ちゃんと殺せたと思ったのに、後から見に行ったら死体が無くなっていた。つまり、殺し損ねてたんだよな、あれは。  ガキは俺の見ている前でなんとか立ち上がると、今度はよろよろと歩きだす。その姿が、殺し損ねた女と重なった。  無造作に突き飛ばしてやると、ガキはちょっと大げさなくらい派手にすっころぶ。足でガキの身体を押さえつけ、細い首に手をかけた。
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