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🌑  リセットすればいいんだよ、結局の所。  ゲームだってそうだろ?  ムシャクシャしてきたら、とにかくリセット!  簡単な話さ。  だから俺は、このムシャクシャした気分をリセットするために、手近にあった何だかよくわかんねえ形のマスコット人形を持っていた紙袋の中に滑り込ませた。  それから何食わぬ顔でスタスタと店の出口に向かう。  簡単な話さ。  店の外に出て、俺は堂々と道の真ん中を歩く。  欲しくもない人形を一つ手に入れたっていう、たったそれだけのことなのに、何をこそこそとする必要がある?  簡単な話さ。  たったこれだけのことで、きっちりムシャクシャがリセット出来るっていうんだからさ、マジで簡単な話だろ?  俺は紙袋片手にスタスタと人気のない方へ歩き続ける。  しばらくすると、誰も利用しない廃れたハイキングコースに出た。途中まではコースに沿って歩き、舗装してあるんだか無いんだか道が曖昧になり始めたところで山道に入る。  獣道を少し行くと、すぐにポッカリと開けた空間に出た。コースからそう離れているわけではないが、そもそもコースにだって人っ子一人いないんだ。決して誰も来ない、何をしたってバレない、ここは“安全地帯”だった。  紙袋から園芸用のスコップを出す。  見れば、案の定、またあの紫の花が咲いていやがる。  花のまわりの土を少し深めに掘り返してから、花を土ごと掘り出した。割とがっしりした葉の中心でふてぶてしく咲く紫の花に目を奪われつつ、紙袋からビニール袋を取り出して、その中に入れる。  掘り返して出来た穴には、雑巾で包んである子猫の死体とさっき盗ってきたばかりの薄汚いマスコット人形を放り込んで、上から軽く土をかぶせた。
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