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機体からは聞き慣れない甲高い音が響いている。ERCが粒子を解放し、スラスターが起動している音だ。
清水が一番機に近づくと整備士の宗方重明がコクピットから降りてきた。
「大尉、機体の状態は完璧です。これを」
そう言って渡されたタブレットを見ながら清水は機体を見渡す。整備不良どころか汚れひとつないことを確認すると宗方にタブレットを返す。
「ありがとう宗方。帰ったら飲みにでもいくか」
「はい、是非!しかし今日はステーキぐらいおごってくださいね」
「考えとくよ」
清水はスクランブル終わりには宗方たち整備士含むチームメイトと飲みに行っていた。いつもどおりのやりとりだったが、今日は宗方がわがままを言ってきた。不安なのだろう。
「財布金入ってたっけな…」
ラダーを登ってコクピットに入りながら清水はそんなことを考えていた。
コクピットに入り座席に座りハーネスを閉める。人体工学を考えてリクライニングしているこの座席は戦闘機としては乗り心地が良い。HMD付きヘルメットを被ると、機体のAIが起動した。
《生体スキャン、清水和弘大尉、認証確認。モニターロック解除。ルーカス隊、2番3番4番機とのリンク確認。》
隣の機体をみると2番機の尾野がサムズアップする。3、4番機の用意ができた合図である。それを確認すると清水はハンガー出口へと進みながら通信回線を開いた。
「管制塔、こちらルーカス隊離陸準備完了。指示を待つ。」
『ルーカス隊、こちら管制塔。4番滑走路から離陸してください。』
「了解。ルーカス各機、続け」
滑走路からはひっきりなしに戦闘機が飛び立っていた。帰還用滑走路にはたまに着陸しているだけ。つまりそういうことだ。
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