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滑走路へタキシングしながら左手で機器を操作しメインエンジンの点火準備をしていく。同時にAIが機体の自己診断シークエンスを進め、パネルに表示された機体の簡略図が徐々に緑色に染まっていく。
《自己診断プログラム起動。主翼尾翼動作確認。正常。フラップ動作確認。正常。ミサイルアーム動作確認。正常。イコライザー機銃動作確認。正常。消火液確認。RPスラスター出力安定。メインエンジン点火準備完了。オールグリーン。》
HMDの僚機情報をみると全機緑色の枠に囲まれている。システムオールグリーンということだ。
「ルーカス各機、イグニッション」
『イグニッション!』
『イグニッション』
『イグニッ…ションっとぉ!』
エンジンのファンが高速回転し圧縮器が起動すると轟音が響きはじめる。
エンジン点火完了だ。
「管制塔、こちらルーカス。離陸準備完了。」
『こちら管制塔。ルーカス隊は離陸後高度5000フィートに上昇、針路063をとりE-3空域で早期警戒機スカイノルンの指揮下に入ってください。』
「聞いたな。針路063E-3だ。」
全員の了解という言葉を聞いた清水は前を睨んだ。滑走路脇の誘導員が手を振っているのが見えた。
《RPスラスター、離陸出力スタンバイ。》
スティックを握りなおし耐G姿勢をとるとスロットルを押し込んだ。ゴオっという爆音とともに身体がシートにめり込み次の瞬間内臓が浮き上がったような感覚に襲われる。離陸した。
スティックを手前に引くと一気に機首が持ち上がる。垂直上昇。HMDのALTの数字が跳ね上がっていく。
100…500…1500…2000…
高度5000だ。
清水がふぅ、とため息をつきスティックを右に少し傾けると機体がグンッと旋回を始めた。この機敏さがこいつの持ち味だ。
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