義兄弟

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俺には二歳年下の義弟がいた。 過去形なのは、現在行方不明だからだ。 俺が東京の大学に進学のため上京する前日・・・ 春から地元の高校二年生になるはずだったのに、突然家出した。 未成年だった義弟を案じ、実母と義父は捜索願いまで出したが、未だに行方知れず。 あれから6年以上…… 俺は社会人になり、家電量販店で働くサラリーマンになった。 どこで何をしているのやらーー。 義弟といっても、それほど仲睦まじくしてたわけじゃあない。 部屋は別々で、会話さえロクにしなかった。 誠(まこと)は大人しく品行方正。 ちょい悪な俺とは馬が会わない奴だと思っていた。 「……お客様、どうなさいました?」 バーテンに声を掛けられてはっとした。 そうだ、俺は仕事帰りにたまたま立ち寄った『イノセント』というバーで飲んでいたんだな…… 一枚板のカウンターの隅に、こんな店には似つかわしくないタンポポが一輪グラスに挿されていた。 「いや、懐かしくて……。実家の庭にタンポポが良く咲いていたんだ」 「ダンディライオンともいいますね。とても生命力の強い多年生植物です」
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