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あまり根掘り葉掘り訊くのは、かえって警戒させてしまう。
折角見つけたのに、また逃げられでもしたら、田舎の両親に申し訳ない。
「お二人は兄弟なのですか?」
出来上がったカクテルを置き、バーテンが尋ねた。
「ああ、義理だけどね。ちょい訳ありで久しぶりの再会だ」
「それは、運命を感じますね。今夜は私からのお祝いです」
運命? 確かに義弟と対面できたのは、人と建物だらけの都会において希な偶然だが、そんな大げさなもんでもない。
道端の草花みたいに偶然なんて結構転がっているーー
◇◆◇
一緒に店を出た。
終電は既に出てしまっている。
「お前何処に住んでるんだ? 俺はこの近くのアパートなんだ。メアドと電話教えてくれ、明日実家に連絡しておく」
急に誠の顔色が青ざめた。
「兄さん、僕を兄さんの部屋に泊めてくれませんか? 僕には帰る場所なんてないんです」
「は? お前何言ってんだ」
「僕、上京してからずっと売り専ボーイやってました」
「売り専・・・て、男に体を売るアレか?」
「はい……」
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