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「それにしても寺岩戸さん。今日はとんでもなく色彩豊かな服装ですね」
つっこまずにはいられなかった。恐ろしいまでにピンク色のスーツに、目には良さそうな真緑のネクタイ。何故かシャツは金色だ。
「良いところに目を付けたね月島君!何をかくそうこの服はイタリアで有名なブランド、アルミャーニのものさ」
「そんなブランド知りませんよ」
「おぉ!久方ぶりのクールガイ!!」
嬉々とした表情を浮かべながらバレエダンサーのように回り始める寺岩戸さん。
とりあえず寺岩戸さんに店長の座っているカウンター席の隣の席を勧める。
意外と大人しくしたがってくれた寺岩戸さんは手に持っていた風呂敷をカウンターに乗せた。
そしてそれをすっと店長の前につき出すと僕が持っていた夕刊を奪い取った。
「早い話が店長。この話なんだ。最近色んな所をまわっているとね、少しおかしな品を目にすることが多くなってね」
店長が風呂敷を開く。
「うわっ!」
思わず声が出てしまった。
風呂敷のなかには明かに人間のものだろうと思われる指が数十本転がっている。
作り物だと最初は疑ったが、どうやら新鮮なものが混じっていたらしくその中の一本の切断面から赤黒い血がトロリと流れ出た。
僕は吐き気を抑えきれず流し台に吐いた。
店長はその指を一本取り上げてじっくりと眺める。そしてポツリと呟いた。
「人差し指泥棒だねぃ」
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