松下惣太郎の中学校時代

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バッターの太良が段々俺のストレートにタイミングを合わせてきているような気がして,俺はホームランが恐くなった。最終的に俺は変化球を使って逃げたんだ。最後の最後で弱気になってしまった。結局勝負には勝って優勝はしたけど…泣きながらベンチに戻っていく太良の姿を見て,何で俺は正々堂々と勝負してやれなかったんだろうって…そう思えて仕方がない。こんな奴が胴上げ投手にも大会MVPにもなっちゃいけないし,全国大会にも行く資格なんかないって思う」。 惣太郎は最後の1球に悔いが残って仕方がなかった。 惣太郎のそんな話を聞いた香穂も,惣太郎の気持ちはよく分かった。 幼い頃からずっと惣太郎と一緒にいる香穂には,惣太郎の負けん気な性格が一番よく分かっているからだ。 香穂も一緒になって悩んだ。 そしてしばらくして,香穂が静かに口を開いた。 (香穂)「いいじゃん,惣太郎。全国大会でやればいいんじゃん。むしろこんな弱気な状態で全国大会行ってみなよ。そっちの方が太良君や全国大会行けなかった人たちに失礼じゃない?それなら全国大会で思う存分ストレート勝負して,全国の奴らを驚かせてやんなよ。そんな弱気な惣太郎,惣太郎らしくないって。過去を消す事はできないんだしさ。
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