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それからのモテ部は、まるでお祭り騒ぎだった。
俺たちは、日曜日のことを「勝負の日」と言って、
やたらに盛り上がっていた。
勝負の日までの四日間で、
完璧に準備をしようと各自で役割を決め、作戦を練った。
当日は、なにか映画でも観ようということになっていたので、
正が話題作やカップルに人気の映画、
デートプランまで調べて計画してくれた。
優は、クラスの女子から女性受けする服装を聞いたり、
一緒に当日の服を選んでくれた。
大輝にいたっては、デートの予定地に
夜になるとガラの悪い連中が溜まるので、
「掃除」と言ってそいつらに片っ端から喧嘩を吹っかけて、
治安の向上を目論むという、荒っぽいことに全力を注いでいた。
そして、いよいよ翌日となった土曜日。
俺たちは最終チェックのため、俺の家に集まっていた。
「まず初めにお前ら、本当にありがとうな。
正直、短い時間でここまでやってくれるとは思ってなかったぞ」
俺が言うと、三人は満足気な表情を浮かべた。
「正が薦めてくれた映画は、
むこうが好きな俳優が出てて、
ちょうど観たかったらしくてな。
提案したとき喜んでもらえたし、
優のおかげで、当日の服装も自信ありだ!」
言われた二人は腕を組んで、ウンウンと大きくうなずいた。
「そして大輝は……ありがとう以外の言葉が思いつかない」
大輝は照れながら「いいっすよ」と言ったが、
他の二人の笑い声でほとんどかき消されてしまった。
まぁ、たしかにこんなバカみたい
……いや、大胆なことを考えて実行に移せるのは、
こいつくらいなもんだろう。
そう思いながらも、笑いそうになるのをこらえていた。
「いいんだよ、大輝。
ヒーローみたいじゃんか、女性の味方、モテ部だ!」
笑われる大輝がちょっとかわいそうになったので、
ひねり出したフォローを入れた。
「でも、古賀さん。女性の味方なのにモテないって、虚しいですよ」
「う、うるせぃ」
正にツッコまれ、今度は俺が笑われるはめになってしまった。
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