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「で、古賀さん。明日はどんな感じに?」
笑ったままの優に聞かれ、
俺は膨らませた妄想を三人に話すことにした。
「まず、映画を観るだろ。感動する作品らしいから、
いい雰囲気になったら、手なんか繋いだりしてな」
三人は話の内容を想像しているらしく、目をつむって耳を傾けていた。
「そして、正が調べてくれたカフェでコーヒーでも飲みながら、
映画の感想でも話すんだ。
そのあとは、加藤に合わせて買い物に行ったりするかもしれないな。
ただ、ラストはなんといっても、丘の上の公園だ!
夜景の穴場みたいでな、
正に見せてもらった画像がものすごくきれいだったんだ。
あれを見れば、ロマンチックになることは、間違いないだろう」
話し終えると、「おお!」という歓声とともに拍手が起こった。
「いいじゃないですか、完璧ですよ」
「情報が役に立ってよかったです」
「そして、兄貴はその公園で告るんですね?」
優と正に続いた大輝の言葉に、思わず吹き出してしまった。
「バ、バカ! まだはやいだろう。二年ぶりに会ったんだぞ?」
「え~、そうっすか?」
納得いかない様子の大輝の肩をつかんで、俺は語り始めた。
「いいか、大輝。
恋愛に焦りは禁物なんだ。焦ったら絶対にダメだ。
冷静になれるときは、冷静でいなくちゃならん。
俺だってな、伊達にフラれ続けちゃいない。ちゃんと、学んでるんだぜ」
「古賀さん、分かります!」
告白の撃沈回数が、俺に次ぐ十一回の優が(ちなみに俺は十三回)
俺の言葉に共感したらしく、大げさなリアクションで手を取ってきた。
「心の友よー!」
俺と優は、抱きしめ合って騒いだ。このお祭り騒ぎは、
ちょっとやそっとじゃあ、収まりそうにない。
「あの、ちょっと気になることがあるんですけど」
明日の意気込みや、やりすぎのシミュレーションが一通り落ち着いたところで、
優が手を挙げた。
「ん? どうした、優」
「いや、加藤さんって県外の大学に進んだんですよね? 結構遠いとこの」
「ああ。そうだ」
「なら、明日の夜に会って大丈夫なんですか?
この間は、GWを利用して帰ってきてたって話ですけど。
夜までこっちにいるなら、月曜日は学校をサボることになりません?
いいんですかね?」
優が言うと、大輝が呆れたように口を開いた。
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