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「こんちわ~」
「どうも」
適当に挨拶をしながら中へ進むと、
部屋では二人の男があぐらをかいて話をしていた。
「ちぃ~す」
「おう、おつかれ」
先に挨拶を返してきたのは、鮫島大輝。
クラスは違うが、僕らの同級生で、
いわゆる不良というやつだった。
どこかのチームに所属したりはしていなかったけど、元プロボクサーを父親に持ち、
喧嘩の強さは地元でも有名だった。
髪は短くて赤色に染めていた。
両耳にはピアスを空け、学ランを大胆に着崩した格好の彼は見るからに威圧感があったけど、慣れてしまえばどうっていうことはなくて、話してみれば友達想いのいい奴だった。
「大輝。お前、今日も学校サボっただろ?」
答えようとした大輝を遮って、
もう一人の男が質問に答えた。
「そうなんだよ。昼過ぎにここに来て、
ずっと俺とダベってたんだ。
俺もヒマだったから、ちょうどよかったんだけどな」
やたらと陽気なこの男は、
この部屋の住人、古賀健太。
二十歳の大学二年生で、
僕らが通う高校のОBだ。
僕たちのリーダー的存在で、
大柄な体格で面倒見が良く、頼りになる存在だった。
元ラグビー部のエースで、
腕っぷしも強かった。
不良とオタク。
就活を考え始めた大学生と
ダラけ始めた高校生。
見たところ、
馬が合わないとも思える僕ら四人には、
ある共通点があった。
「これで全員揃ったな。
じゃあ、点呼!」
古賀さんは
僕たちを見回しながら言った。
「天野優」
「はい」
僕は自分の名前を呼ばれて、返事をした。
「大田正」
「はい」
「古賀健太」
古賀さんは自分の名前を呼ぶと「はい」
と自分で返事をした。
「鮫島大輝」
「うす」
全員の名前を呼び終わると、
古賀さんは満足そうにうなずいた。
「では、ただ今から、
モテない・男たちが・助け合う部。
通称モテ部の部会を始める!」
僕たちの共通点。
それは、今までの人生で
一度も彼女がいないことだ。
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