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「もう、女子の間でも噂になってるんですよ。フラれたこと」
と、正が肩を叩きながら言った。
教室で話しているところを聞いたらしい。
「なんて言ってた?
優のこと馬鹿にしてたのか?」
真っ先に反応したのは大輝で、
前のめりになりながら聞いた。
大輝は地元でも有名な不良だったが
仲間意識が人一倍強く
まっすぐな性格で頼りになる奴だった。
やり過ぎてしまうときも何度かあったが
本気で行動してくれる大輝に
みんな感謝していたし
正にいたっては
イジメから救ってもらったこともある。
初対面だった俺に、喧嘩を吹っかけてきたのを
返り討ちにしてから「兄貴」と呼んで慕ってくれている。
俺にとっては、やんちゃな弟のような存在でもある。
「いや、馬鹿にはしてないよ。
フラれてかわいそうだって話だった。
優、顔が広いし悪い噂は聞かないね」
「当たり前だ。こいつはいい奴だ。
そう簡単に嫌われたりするもんか」
正と大輝に言われ、
優は恥ずかしそうに笑った。
優は、名前の通り優しいというか
お人好しというか、
とにかく二人の言う通りいい奴だった。
ノリはいいし、面倒くさい頼みごとも
なんだかんだ言いながらも引き受けてくれるし、
モテ部のメンバーはもちろん、
色んな奴からの相談に乗っていた。
深夜にかかってきた
女友達からの別れ話の電話を、
三時間以上聞いてやったこともあるという。
なんでこいつに彼女が出来ず、
フラれ続けるのかみんなで真剣に考えたこともあったが、
本人曰く
「何をしてもいい人止まり」
なんだそうだ。
「僕のことより、
みんなはどうなんだ?
好きな人ができたとかないのかよ?
古賀さんはバイトで忙しかったから仕方ないけど、
二人はせっかくのGWに
女の子と遊んだりしてないの?」
褒められて恥ずかしかったからか、
フラれたことを思い出したくなかったのか
優は話題を自分から両隣りの二人に移した。
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