5人が本棚に入れています
本棚に追加
「結局、全員これまでと変わらずか」
優が言い終わると同時に
後輩三人が同じようにうなだれた。
「あー、ちょっといいか?」
少し間をおいてから、
俺は手を挙げながら言った。
ちょっと恥ずかしいが、こいつらに言わないわけにはいかない。
「実はな、いや、特になにかあったって訳じゃないんだが」
「えっ! な、なんすか?」
見ると、声を発した大輝を含めた全員が、
好奇心に溢れた目で
こっちを見ていた。
「バイト先の居酒屋にな、高校時代に
告白した相手が来たんだよ。
もちろん、当時はフラれたんだけどな。
んで、バイト中だったんだけど盛り上がってなぁ。
今週の日曜に
二人で遊びに行くことになった」
俺がバイトをしている居酒屋は、
大手のチェーン店で店の規模も大きく、個室の数も多い。
その日、注文を取りに店の一番奥にある座敷に入ると、
五人組の女性客がいた。
一通り聞き終わったあとで、
一番近くに座っていた女性が声をかけてきた。
「ねぇ、古賀くんだよね?」
女性の声を聞いて、俺は慌てて顔を上げた。
彼女の名前は加藤(かとう)有希(ゆき)。
高校生活最後の日に、
それまで秘めていた想いを伝えた相手が、
さらにきれいになって座っていた。
高校時代、ショートカットだった髪は伸び、
きれいに化粧をした姿は昔と比べて、とても大人っぽく見えた。
それでも、優しい話し方や笑ったときのえくぼなど、
当時の俺が惚れたところがそのまま残っていた。
彼女は県外の大学に進学し、
一人暮らしをしていたのだが、GWを利用して帰ってきたらしい。
連れの四人は、中学時代の友達だった。
俺は、加藤たちの座敷が一番奥なのをいいことに、
料理や飲み物を運ぶたびに話し込んで盛り上がり、
連絡先を交換して、遊びに行く約束までしてしまったのだ。
加藤たちが帰ったあと、店長にバレて怒られたが、
後悔はまったくなく、上の空で説教を聞いていた
最初のコメントを投稿しよう!