Not Hero, I'm……

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「ほう、いい反応だな」 エバーライトはコートを焼いた一瞬の隙に距離を詰められて、Mr.御劔に懐に潜り込まれ突き出された状態の短刀を蛍光灯にも似た棒状の物体で辛うじて防いだ。 「身体の上下に分断するつもりだったのに、中途半端に切っちまった」 否、防がされた。白いスーツと生身の部分を浅く切られて血が遅れて出てくる。並大抵の物理現象では損壊させることすら不可能なヒーロースーツを、紙でも切るかのように裂いてみせたのだ。 「あ、あり得ない。何だその武器は!」 「丈夫だけが取り柄な骨董品だよ」 Mr.御劔は間合いの調整をすることなく短刀を振り回すのでエバーライトのスーツと生身の薄皮のみを切り裂いていく。白いスーツは流れ出る血液によって不規則に赤い斑点模様がついていく。 「うおおお!!」 エバーライトは不利な状況を打開するために、自らの足下に光線を放って爆発を起こして無理矢理距離をとる。Mr.御劔は事前に察知していたのか爆発源から既に離れている。 「ははは、もっと足掻いてくれ、HERO! みっともなく、泥臭く、惨めったらしく 生に執着する姿を見せてくれ!」 コンテナの上で膝を着いて肩を揺らしているエバーライトを見上げて、高笑いしながら歩いて距離を詰めていく。 「惜しんでいられる状況ではないか、 リミッター解除……出力200%に設定…… いくぜ、外道! 貴様を殺して俺は返り咲く!」 エバーライトのボディから放たれる光は青白さより赤白く白熱し始めて、放熱を行っているのかコンテナを焼いて焦がしている。 「んーあれだなー、蝋燭が消える前の最後って確かあんな感じだよな」 両手から轟音を伴う赤白い極太の光線を放つと同時に、Mr.御劔に向かって照射しながら高速で移動し、ぐるぐると周り浴びせる。 光線の照射が途切れると同時に自身をさらに輝かせ、拳を振り上げ全身を光の弾丸に変えて突撃する。 煙でよく見えないが、自分を追い詰めた相手がこの程度で蒸発する筈がない、という確信から止めの一撃、己の誇る最強の攻撃でケリを着けようとする。 「さよなら、楽しかったよ」 エバーライトくん、と呼ばれた瞬間に爆煙は消え去りMr.御劔の健在な姿が、エバーライトの背後にはあった。 エバーライトの身体は縦に線が入ったかと思うとメットが割れ変身前の素顔を晒して強烈な発光と共に爆発したのだった。
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