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朝焼けが出る前にクリスは光学迷彩、つまりは透明になれる道具を使用して俺の前から実像を消したパンプスの音が発っていたことから足音までは消さず、次第に遠ざかっていったことが分かった。
もちろん、光学迷彩は一般人の買えるような代物ではない。値段的な問題もあるが、社会的な問題にも発展しかねないので、一般に開示されている技術でもない。それに迫って二度と朝日を拝めなくなった連中を俺は知っている。
まあ、要するに彼女のバックにはとてつもなく大きな組織がいるのだということで閑話休題。
俺は骨董品の携帯電話を胸ポケットから出して、オフィスの電話の番号を押してかける。
『─こちら、コード【ブルーファング】、何だいボス?此方の電話使うの珍しいじゃないか』
丁度、呼び出すつもりでいたヤツが出てくれたので手間が省けたので、ラッキーだと思いつつそのまま話す。
「たまには悪くないだろ、ブルーくん。
電波の調子で変わんのとか、
劣化した音質とか、
要らん音まで拾ってくれるところとか、
会話にラグがあんのとか、
こうやって手に持って話すのが電話っぽくて俺は好きなんだけどなあ。
今時ハンドレスタイプが主流だから、誰にも理解されない趣向だったり……」
『ボス?
まさか電話をかけたかっただけとかそんなんじゃないだろう?』
「んー、そうだな。
じゃ早速、すぐにでも動けるのって誰がいる?」
『別件でいない彼女のサポーターを除けば、俺と勤勉実直な隊員が……、3人……いや2人だな』
「そうか、思ったよりいるんだな」
『は?』
「分かったよ、ブルーくん。
君と後1人君の選んだヤツに来てもらおうかな。んで、残った方がお留守番ということで」
『待て……どういうことだ?』
「んんー、やっぱ骨董品は電波が悪いなあ……。
集合する場所と時間の指定と持ち物のリストは後で送るし、一旦切るわー」
白々しい、と怒鳴りつけるブルーくんを無視しつつ通話を切ると、すぐにメールを打ち込んで送信して畳む。
俺は朝焼けと明るくなってきた空にまだ浮かんでいる三日月を拝みながら、自宅へと帰って寝ることにする。
睡眠導入の儀式として、少量のお湯で練ったココアに、沸かした牛乳を投入したモノを胃の中へ流していく。ほどよく身体が暖まり、そのまま毛布にくるまったのだった。
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