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男にしては長い茶髪とカラーコンタクトではないナチュラルな緑の瞳で、風貌はアジア系ではなくヨーロッパ系で肌の白さもクリスのそれと同じ、長身で長い脚と黒のスーツが似合っている好青年といったところだ。
「御早う、蒼牙くん」
彼の名前は水島 蒼牙(みずしま そうが)といい、生まれも育ちも日本で国籍も日本に置いている。
ようやくと国際交流が始まって以来、彼の家は多くの民族の血を代々受け入れてきたらしく、色濃くでたのがヨーロッパ系であるとか何とか。
「おはようございます、ボス。
また、酒飲んでたんですか?」
「君たちに一杯奢るぜ?」
もう1人の男と一緒に俺の隣に来て挨拶するなり、空になったグラスを見るなり蒼牙は呆れて咎めるように言うので、勧めてみる。
「蒼の坊主は仕事が終わるまで飲まんだろう、Mr.……。ほい、こいつなら飲むだろう」
「ラカンさん……御気遣いありがとうございます。ボスにはまたの機会に奢っていただきますよ」
そうかい、と俺が言うと蒼牙くんは白いノンアルコールことミルクの置かれた席に座る。堅い奴だがそれが彼の美徳であったりする。もう1人の男もそれに習ってミルクを頼む。
「さてさて、お仕事の話に移ろうか。
資料には全部、目を通して貰っているね?」
「もちろん」
「というより内のデータベースに記載されてる情報から大して更新されてないのであまり時間は掛けなくて済みました。
機材も全てポイントに設置済みで、何時でも決行は可能ですよ」
もう1人の男こと、蒼牙くんの同僚はミルクで白い髭を作りながら、そう言うので、締まらないが俺はその言葉に満足する。
「仕事が早くて助かるよ、持つべき者は優秀な社員だな……。
これより現場へと向かい、俺と対象が接触次第、ミッションを開始する、解散」
蒼牙くんと同僚が席を立って先に店を出ると次に俺が立ち、マスターのラカンさんに声を掛けられる。
「本当に今回のヤマは楽なのな。
殆ど何も話してないじゃないか」
「んー、細かく調整する必要がないくらいには美味しい依頼だよ。
こいつは試験と捉えて問題ない」
「Mr.御劔を試すなんて余程だな。
バージンにも程があるだろう……」
「そうは言わない。
新しい顧客が彼方から歩み寄ってくれて嬉しい限りなんだから」
ヤレヤレといった様子を隠さないマスターと、笑みをうっかり溢す俺であった。
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