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月の顔が真上に来て大地を見下ろし照らす時間、積まれたコンテナが迷宮のようにも思える寂れた港に、一人の男が佇んでいる。
HERO【エバーライト】と呼ばれる男は夜の闇に溶けそうな黒髪で濃いブラウンの瞳のアジア系、骨格は昔ながらの日本人といったかんじで、恵まれた体格をしているが180に満たない。
そんな彼は浮かない表情をして、メールを送ってきた者の存在に想いを馳せていた。恋人ではない、愛人でもない、自分を雇った会社の人間でもなければ、組織の元上司からでもない。
ただ、自分の不安を駆り立てる人生の障害物で、此処へ来た奴を消してしまえば一先ずの安息を得ることが出来るのだというのは、出来のよくない頭でも分かる。
彼が【エバーライト】足らしめるペンライト状の機器を握り締める力が強まり、嵌めている皮の手袋と擦れて音がでる。
「今晩は、エバーライト。
こんな夜遅くに呼び出しに応じてくれて感謝するよ」
月明かりによって出来たコンテナの影から声を掛けながら男し出現する。
「よく言う……、出て来ざるを得ない脅迫をしておいて」
「んー、俺は悪くないよ。
君が真っ当に善行を積み重ねていれば、
現状は無かったハズだしねぇ」
「お前は何者だ?あの団体の関係者か、それとも復讐目的で雇われたヒーローキラーなのか?」
男はペンライト状の機器を構えると、スイッチ部分に手を添えて臨戦態勢になる。相対する男こと、Mr.御劔は黒いコートをはためかせ、目を細めて不敵な笑みを浮かべながら腕を組み立っている。
「どれも外れであり、誰もが望む答えだろうねぇ、エバーライトくん。
強いて言うなら、君に存在されていては困る人たちに雇われた職業ヒーローキラーってところかな」
エバーライトと呼ばれていた男はスイッチを親指でノックしてライトを点ける。それが変身するための起動装置であったらしく、眩しくて直視をしていられない程の光を放ち男のフォルムが変貌していく。
昔の特撮作品で、変身中のヒーローを攻撃を加えてはいけない御約束があったらしいが、激しい光は衝撃と熱を辺り一帯に撒き散らしているのでまともに近づく事ができず、攻撃をすることができない。
そして、光が晴れたかと思うとMr.御劔の真上から月をバックに高速で突進していたのだった。
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