プロローグ

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誰かにつけられている気がする、と、そう思ったのは冬休み最終日の夜だった 無事すべての課題を終わらせ、さぁ夜食でも買いに行くか、とコンビニへメロンパンを購入しに行った帰りのこと 背後に、人の気配を感じた ・・・・・・、可笑しい、僕はうら若き乙女ではなく、灰色の青春を過ごす一介の男子高校生に過ぎない いや、もちろん男子高校生であっても、美男であればストーカーの一人や二人できるものなのかもしれないが、容姿の面で僕に秀でたところは無いので、それはないだろう 悲しい自己分析をしながら、僕は街灯が切れかかった夜の道を歩き、思考を重ねる と、すると、だ。他の可能性としては、深夜徘徊の少年をとっ捕まえる警察官のお方とかが、まさしく深夜徘徊中の僕を追跡しているとか―――、は、違うか もしもそうだとしたら、ストーキングする必要はない。さっさとその持前の権力を使って、職務質問でもなんでも行えばいい そうすると、なんだ? 僕の脳裏に、「恐喝」や「誘拐」、「かつあげ」などの、ネガティブ極まりない単語ばかりが飛び交う 「・・・・・・、・・・・・・」 いや、まて、落ちつけ僕。大丈夫だ、大丈夫だって僕。考えてみろ? 僕だぞ? この街で一番平凡という言葉が似合うであろう僕だぞ? そんな事件みたいな何かに巻き込まれるわけがない。ありえないって。そんなこと、この僕自身が一番よく分かっていることだろう? 十八年間生きてきて、なにも物語性のある出来事は起きなかった なのだから、ありえない。例えば夜道でガトリングを振り回す少女や、甲冑を着こんだ男に出会うとか、そんなことは絶対にあるわけがないのだ ここは現実だぞ? ライトノベルや漫画の世界じゃないのだ そんな思考を重ね、僕は僕の中に募る不安を打ち消そうとするが、不安も後ろの気配も消えてはくれなかった
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