695人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
鉈峰さんは、そこで急に口を閉じ、少し目を伏せる
「どうしたの?」
「いえ、ちょっと考えていたのよ・・・・・・、どうして私は人を殺す、殺したいと思うんだろう、って。この間からずっとね。どうして通り魔なんてするのかしら、って」
「ふんふん、それで、結論は出た?」
「全然分からないわ・・・・・・、自分のことは自分が一番よく知っている、なんて所詮は戯言に過ぎないのね。あなたは、人を殺したい、って思ったことはある?」
「そりゃあもちろんあるよ、生きてるんだから」
「そう、その時、あなたはどんな感情で人を殺したくなったの?」
「んー、そうだな、やっぱり恨みつらみが一番多いよ。あとは嫉妬とか。あとこれは少しだけなんだけれど、物欲でも人を殺したい、って思ったことはあるかな」
「物欲?」
「そう、他人が何か、僕が欲しくて欲しくてたまらないものを持っている時とか」
「なるほど、でもそれは通り魔的には関係ないわね。全然参考にならないわ」
「そりゃごめん」
しかし生憎、僕には無差別殺人なんて危険極まりないクレイジーなことをする人間の思考なんてわからない
「でも、その様子からすると、鉈峰さんは快楽殺人鬼ではないのかな」
「快楽殺人?」
「そうそう、人を殺すことで『気持ちいい』とか感じる人。爽快感とかそう言うの」
「どうかしらね・・・・・・、わからないわ」
彼女に分からないものが、僕にわかるわけもない
最初のコメントを投稿しよう!