第三十一話

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 ―もっと強くなりたい。柊先輩いつか、あなたのような捜査官になりたい!―  私は心の底から、そう決意した。  私にとって無二の親友である舞唄が、忽然と姿を消して、もう二週間がたった。やはり拉致されたと断定してもいいだろう。しかしその場所を、特定できるすべはなかった。 「今回は分かれて捜査するか?」 「でも……」 「ただし何かあったら絶対に連絡してこいよ?」  私は素直にうなずくことしかできなかった。思いっきり規則違反になるが、柊先輩であれば、私の命を十分に、預けることができた。  私はひとまず、彼女の身辺を洗いなおして、父親の情報を探ることにした。そして一方の柊先輩は、妹の恋人を探して、何か分かったら逐一報告することで合意して別れた。  そういえば、ずっと気になっていた。ロケットとペンダントの素材は、銀かよくてもプラチナが主流だろう。日本で純金なんて珍しいことだ。彼女の父親が日本人ではないとすれば、分からなくもないが、どこから探してどう接触するかという大きな問題に直面した。探すのも会いに行くのも、一筋縄でいきそうになかった。  普段なら舞唄か柊に聞くところだが、一人は行方が分からず、もう一人の居場所は分かるが、距離を置いているため、顔を合わせずらかった。そこでその手に詳しそうな人が、頭に浮かんで、彼のひざ掛けを持って社長室に現れた。  ガネーシャが描かれた、手織りで作られた、それは見るからにインド製を物語っていた。 「さっき話したばかりなのに、どうしたんだい?」 「長らくすいません。返却に来ました」  そういってひざ掛けを持ったまま、私が両手をあげると、若葉社長はああと、納得した表情を見せた。
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