Change your life!!!

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昼間なのに人気のない住宅街の中には、制服姿で気だるそうに歩く一人の青年の足音だけが響いていた。 青年は住宅街の奥、他の家から少し離れた白い家の前で足を止め、慣れた手つきで鍵をあけて中へと入っていった。 「ただいま…。」 ポツリと呟くように言った言葉は薄暗く静まりかえった家の中に消えていった。 (…まあ、当たり前か。) 軽くため息をつきながら玄関の鍵を閉めた。靴を脱いで中に入ろうとした時、上がり口の所に封筒に入った手紙が置いてあるのが目に入った。 それは俺宛ての手紙のようだが切手は無く、裏を見ても送り主の名前も書かれていなかった。 (それにしても何でこんなとこに…) 戸惑いながらも封を開けると、中には"Change your life!!!"と書かれた1枚のカードだけが入っていた。 (…ふざけてる。) 俺はそのカードを封筒ごと握りつぶして壁に投げつけ、そのまま2階にある自分の部屋へと向かった。 部屋のドアを開けた時、俺は目の前の光景に愕然とした。そこにはあるはずの自分の部屋はなく、真っ暗な闇の世界が広がっていた。 「は…?」 その光景に呆気にとられていた俺は背後に迫る気配に気づいていなかった。 「さようなら。」 「…うわっ!?」 背後から少女の声が聞こえると同時に強く背中を押され、バランスを崩した俺は闇の中へと落ちていった。 どこまでも続く闇の中を為すすべもなく落ちていく。 (…俺はこれからどうなるんだ…?) 「ーーー。」 闇の中からかすかに声の様なものが聞こえてきた。 「誰かいるのか…?」 見回してみても周りには闇が広がっているだけで他には何も見えない。 (なんなんだよ…。) そう思った瞬間、背後から誰かが俺にしがみついた。その人のものであろう黒くて長い髪が俺の体にまとわりついてくる。 「ねぇ、私に記憶をちょうだい」 「……!?」 少女の声が俺の耳元ではっきりと聞こえた瞬間、頭が割れそうなほどの強い衝撃が俺を襲った。あまりの衝撃に俺の意識はだんだんと遠のいていった。 気を失う寸前に俺が見たのは… 不気味に笑いながら、俺を見下ろす少女の姿だった。
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