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一卵性の双子、というものは変な感じだ。
自分ではないのに、自分と同じ顔をした人が目の前に現れるなんて。
けれど決してゆかりのことは嫌いではない。
親よりも近くて、私のことを分かってくれる。
きっとゆかりも私のことをそう思っているだろう。
高校を別にしたのは、お互いなんとなくだった。双子だからと言って同じところに行かなければいけないこともないだろうし、先生方や友達が困る様子を見るのもあまり楽しいものでもない。
親友と思っていた子が、私とゆかりの区別がつかないなんてこともあったし、幼い頃はそれなりに傷ついたりもした。
だから、別の高校に行こうと決めた。
親は少し戸惑っていたけれど、「もう高校生だし、いつまでも一緒じゃなきゃいけないということもないだろう」と認めてくれた。
今はお互いの制服を着てみたり、学校の様子を報告しあったりと楽しみも増えた。
でも……
まさか、私の通っている高校にゆかりの好きな人ができるなんて。
変な縁だなと苦笑が浮かぶ。
「あおい、変な顔」
ゆかりがにこにこと笑って言う。
彼女が私の顔を見て笑っているわけじゃないことは、きっと双子じゃなくたってわかっただろう。
ゆかりの世界は今バラ色に輝いていて、楽しくて仕方がないのだ。
「ゆかりはすごく、幸せそうな顔」
少し意地悪な気持ちになって、ゆかりのピンクに染まった頬をつねってやった。
「いたぁい」と言うゆかりは、しかし嬉しそうで、顔の筋肉は緩みっぱなし。
一目ぼれでこんなに幸せそうになるなんて、我が妹ながら可愛いと思う。
そして少し、羨ましかった。
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