第1話

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最近眠れない日々が続く。 思い返せばあの日からなのかな。 待ちわびた人。 来なかった彼。 一生会えなくなった、彼。 桜は散り蝉も役目を終え、紅葉が終わり雪が降りました。 それを幾度となく繰り返しました。 もうどれ程の歳月が流れたのでしょう。 今あなたはどこにいますか。 どこから私を見ていますか。 何を思い、考えていますか。 全て答えは返ってこないのだけれど せめて問いかけさせて下さい。 私は今あなたが昔見ていた空で夜を感じています。 この夜空のどこかの星にあなたはいるのでしょうか。 あなたの残した香りと唄が。 今の私の唯一の癒しです。 あなたが遺してくれた言葉は 今でも鮮明に思い出します。 「お前にハマっちまった」 照れて真っ赤になった顔で、けれど真剣に伝えてくれた言葉 「刺激的でいてくれ、俺が死ぬまで」 酔った勢いか柄にもない台詞 「お前の声聞きゃ心が休まる」 感情的になっている時に宥めた後ぽつりと呟いた 「俺だけのものにはならないってわかってる」 苦しそうに切なそうに、無理に作った笑顔で言ったよね 「お前にだけは悩み事話しとこうって思う」 そう言ってたのに最後の一番肝心な悩み事を話さなかったね。 そしてそのまま旅立った。 残された私の事を少しは考えてくれましたか。 私はまだあなたから離れられずにいます。 ほらまた今日も眠れない夜がきました。 あなたを探す旅に出ます。 あなたが残してくれた香りと唄と供に。
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