第1章

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「ぷっ……。はははははっ」  いきなり優生が吹き出した。 「ああ、おかしーい。勘弁してくれ、マジうける~。今の反応もそうだけど、元気が取り柄の奏多のクセに萎れて黙っているんだもん。オレ達ってさ、やっぱ三人そろってないとダメだな~って思わね?」  ふっと、緊張の糸がようやく切れた。優生のお陰だ、助かったあー。  なあ優生、おいお前。これって絶対わざとだろ? オレの様子をチラチラ見ては、タイミングをはかってた?   いつもお前はそうだよな。たまに説教たれるけど誰よりこうして気遣いできる。オレはこいつのこういうところ、凄いと思う大好きだ。心でだけど褒めてやる。でかした優生、よしオレも!   こそりと浅く呼吸していつものようにニカッと笑う。 「ストップ、ストップ、ちょい待った! 黙って聞いちゃあいたけれど、さらっと今けなしたろ!? なんだよ、その言いぐさは……。オレに言わせりゃそっちこそ、難しい顔して黙ってたじゃん!」  そう返すと優生は鼻の頭を掻きながら、そうだっけ? と誤魔化しつつも、口角を上げていた。 「だけどお前の言うとおり。稜がいないとしっくりこないっていうかオレ達らしくないっていうか……。なんかこう、いまいち上手くは言えないけれど気持ち悪くてもうダメだ~。うん、そこは同意する。三人じゃなきゃってさ、オレもつくづく思ったよ」  だよな、だよな、そうだよな。稜を含めた三人がイイ!   早速頷くとオレ達は、声を響かせ大きく笑った。  ――サワサワ……。サワサワ……。  また風の音がする。  だけどもう大丈夫。腹から何かを吐き出すようにひとしきり笑ったら、気持ちが一気に軽くなった。サワサワいってた風だって急に耳障りじゃなくなる。イラつかなくなる、ほっとしたあ~。どうしてなのかはわからない。けれどもちょっぴり不安だったから……。  風が今度はおでこを撫でた。  優生も、稜のことやオレ達三人の関係を、そういうふうに捉えてたんだ――。  オレはめちゃめちゃ嬉しくなった。
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