第1章

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「なあ、奏多。さっきお前……、何か言いたいことがあったんじゃないの?」 「やっ…………まあそのなんだ、あはははは。えーと、えーと、あっ、そうだっ! そうそうそうだよ優生こそ、何か話があるんだろ!? 大丈夫だよ、気にすんな、オレのは大したことじゃない。だからお前が先に言えよっ」    本当に、オレが言おうとしたことは、スルーするのが正しいくらいどうでもいい事だった。だってあの沈黙を、どうにかしたかっただけだから。    察したのか優生は一度くすりと笑ったのち、「じゃあ、それなら先に言うわー」と空を仰いで息を吸い、それから突然真顔になってオレの顔をじっと見た。 「教室で、稜は普段と違うこと、お前に喋ってなかったか?」 「ううん、何も」    稜は実際、気に留めるようなことなんて、何も言っていなかった。    オレじゃ頼りにならなくて、話す気にもならなかったのだろうか?     たとえほんのわずかでも、遊ぶ時間を捻出したくて……。じゃれながらも競り合うように息を切らして抜けてく道を、今日はゆっくりゆっくりと、ためらいながら歩いてく。  これでもかっ! というくらい、ゆっくり、ゆっくり――。    こんなペースで帰ったことは、これまで一度だって無い。
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