第1章

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 市を左右に分けるよう流れゆく川の両端は、視力が自慢のオレですら人家が満足には見当たらないし、夕方を過ぎると驚くくらい人通りがぐっと減る。  特に冬場はどうしても日が落ちるのが早いため、他の季節と比べると、よくよく注意が必要だ。  電灯の乏しいこの場所は日没と共に漆黒の闇が辺りをするりと包んでしまう。  そうなるとここら一帯は、想像しなかったような危険地帯へと、温和に見えたその顔をがらりと変化させてゆく。  どうやら不審者も出たらしい。注意を促す看板が、幾つかまた増設された。  オレ達全員昔から、お気に入りのグラウンドは、こーんな場所に存在してる。  だから約束を違えたその瞬間、親の頭に立派な角が生えてくるのは当然だ。  学校からもしつこいくらい、手紙がたびたび配られていた。 『保護者の方は、誰とどこへ行くのかを、外出の際はお子さんに尋ねてくださるようお願いします。特に川沿い周辺は、なにかと危険なエリアです。児童達だけで出かけるときは暗くなる前に必ず帰宅できるよう、厳重にご指導ください。』  なんて、内容だっただろうか……?
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