第1章

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 だけどオレの母さんは「誰と」も「どこへ」も訊かないし、グラウンドには行くなとも一切こっちに言ってこない。  明るいうちなら低学年でも皆でわいわいやってるし、遊歩道を楽しむ大人の姿も結構あると知っているから……。  でも代わりに母さんは「約束よ、時間だけは守りなさいよ! それからあともう一つ、これは言うまでもないことだけど『絶対必ず』だったっけ? 奏多が自ら言ったのよ。やるべきことが終わらなければ夕飯抜きにするからね!」と言う。  優生と稜の母さんも、あらかた同じことを言うそうだ。  それは各々の母さんが「誰と」と「どこへ」は訊かずとも把握している証拠だろう。  もしかしたら秘密裏に、まめに繋がっているのかも……。  他のやつらが気まぐれに加わることはあったとしても、オレ達三人は何か特別なことがない限り、いつでも行動を共にしてきたから。  そうやって何年にもなる。これだけ近しい関係を幾重にも重ねてオレ達は、咲良が生まれる以前から絶えず紡いできた仲だ。  だからわかる。今日、あの時。稜は様子が変だった――。
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