第1章

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 いつもなら三人で、はしゃぎながら通る道。けれど今は二人きり。うつむき加減にとぼとぼ歩く。  そうだった。本来オレと優生は、自分から喋るほうではない。 「~しようぜー」とか「~って、どう思う?」とか稜が寄越した言葉に対して、「えーっ、~かよ」とか「なになに、なんだよ、今のソレ。面白そうだし良いじゃん」なんて、そこにひょいと乗っかって転がしていくのが殆どだ。  尽きることない話の種を、撒いていたのは稜だったんだ……!  そんなことに初めて気づく。稜はムードメーカー的な役割もずっと担ってきてたのか。  無論、優生と二人だと嫌ってわけじゃあ決してない。だけど何かが確かに違う。  そうか! オレ達は三人いて、ちょうど良いバランスを、これまで保ってきてたんだ!  単純すぎるこんなこと、今頃になって気づくのは、あまりにも当然に――、それは無くてはならない空気のように。在って然るべきモノとしていつしかなっていたからだろう。  サワサワって音がする。小さいけれど確実にどこかで風の音がする。  ここのところ続いてた、かなり意地悪な北風も、比較的今日は穏やかだ。風が頬を撫でていく。  少しヒヤッとする。でも……冷たく感じるくらいのほうが温まってきた体には、むしろ心地よいはずなのに。  風の音が、やけに気になる。
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