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「なんなんだ、この天国は!」
クニが両手を広げて叫んだ。目の前に広がるのは肝臓の形をしたプールだ。飛びこみ台からきれいな曲線を描いて、ビキニ姿の女子生徒が青い水面に頭から落ちていく。ほとんど飛沫(しぶき)が上がらない見事な着水だった。プールの水は夏の日ざしを浴びて、ゆらゆらと青い鏡のようにうねっていた。
「おいおい、あいつ2組の前島早苗(まえじまさなえ)じゃないか。制服着てるとやせて見えるけど、けっこう胸がでかいんだな」
進駐官養成高校では水泳の時間は男女別々なので、女子生徒の水着姿を目撃するのは初めてだった。タツオは自分の身体(からだ)と同じ筋肉と脂肪からできているとは思えない完璧なふくらみから目をそらして、周囲を観察した。前日の夜、東園寺(とうえんじ)家の別荘に3組1班は到着していた。
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