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「タツオならいいよ。わたしの胸さわったの、初めてじゃないもんね」  クニが頭を抱えて叫んだ。 「SPのみなさん、こいつを不敬罪で射殺してください。皇女さまのおっぱい、さわったんで……」  クニがそれ以上おかしなことをいう前に、タツオは飛びついて水面下にクラスメートを押しこんだ。SPには冗談では済まないだろう。射殺はされないまでも、減給や停職の可能性はある。皇室関係のSPは最高の訓練を積んだ最優秀の人材ぞろいだという。こんなことでキャリアに傷をつけたくなかった。  タツオの腕のしたで、クニがもがいていた。息ができないのだ。いい気味だ。タツオはもう一度深くクニを水中に押しやって、クロールでその場を離れた。 「瑠子さま、こんなやつほっといて、いきましょう」  瑠子さまは小学生の頃から、オリンピック選手から水泳の指導を受けている。鮮やかな抜き手でタツオのあとを追ってきた。
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