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 アロハシャツを着たクニに背中を強くたたかれた。タツオは女子生徒の水着を楽しむどころではなかった。情報保全部に逮捕されたスリランたち3組7班のことが気になってしかたなかったのである。秘密主義の保全部のことで、その後の捜査の進展についてはひと言の情報も漏(も)れ聞こえてはこなかった。スリランのウルルク班は養成高どころか、地上からもきれいに消え失せてしまったようだ。  ほかの生徒たちも自分とは別な民族のクラスメートには冷たかった。初めから存在していなかったかのように、誰も口にさえしない。そんななかタツオは、逮捕されたときの絶望に満ちたスリランの目が忘れられなかった。あのとき無言のうちに自分はなにかを託(たく)されたのだ。なんとしても、あの依頼にはこたえなければならない。 「ここはいいところだな。タツオ、クニのいうとおりすこしリラックスしたほうがいい。ここにはいろいろな目がある」
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