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 打ち寄せるさざなみのように囁(ささや)き声が聞こえてくる。 「瑠子(るこ)さまだ」 「あれが瑠子さまか」 「東園寺家の彩子(さいこ)姫もいっしょだ」  男女混合の半ダースほどのSPに囲まれて瑠子さまとサイコがやってきた。ふたりとも水着を着ている。瑠子さまは古典的な純白のワンピース。背が高くグラマーなサイコはコーヒー色のビキニだ。 「おーい、サイコ。こっち、こっち」  プールのなかから声をかけたのはクニだった。テルが水面から木の根のようにふくらんだ僧帽筋をのぞかせていった。 「うちの班で最初に突撃して死ぬのは、クニに間違いないな」  ジョージはプールの縁(ふち)に腰かけていつものように笑っているだけだ。タツオは飛びこみ台を戻って、瑠子さまとサイコを出迎えようとした。わざわざ東園寺家の別荘にきたのは、この2人と話をするためだ。
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