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瑠子さまはタツオの身体を離さなかった。水中でなにかいいたげに顔を近づけてくる。形のいい少女の唇(くちびる)が水に歪(ゆが)んでいた。水泡とともに皇位継承者の顔が、ありえないほどの距離になった。頬(ほお)にキスされたとき、タツオは息ができない水中で、なぜか口を開いて息を吸おうとした。爆発的に口中に水が浸入してきて溺(おぼ)れかかってしまう。
タツオは手足を振り回して、なんとか肩の深さのプールで立ちあがろうとした。はずみで瑠子さまの身体をつかんでしまった。ひどく柔らかだったのは、腹なのか、胸なのか、尻なのかわからなかった。
水面から顔をだしたときには顔を真っ赤にして叫んでいた。
「すみません、瑠子さま。変なところをさわってしまって」
「なんだよ、タツオだけずるいな」
クニはこんなときでも軽口をはさんでくる。タツオは恐縮していた。瑠子さまは平然とずれた水着の肩ひもを直している。
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