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「具合なんて悪くないよ、まー君に颯ちゃんの居場所を聞いたらここだって言うから」
彼のブレザーの裾をチョンと掴み、彼に体を寄せて甘えるような可愛い声で言う彼女。
背が低くて、色白で細くて、目なんて私の倍はありそうなくらいクリックリ。肌なんてもう湯上りたまご肌って感じ。
何もかも可愛い。
何もかもかなわない、と思った。
「まー君が言ってたよー、最近、颯ちゃんが保健室に入り浸ってるって」
――え?
彼女がそう言いながら、物凄い形相で私を睨み付けた気がした。
私の気のせいか?
「入り浸ってなんかねーよ、どうしたんだよ急に」
「だって、最近の颯ちゃん、全然さやかのこと構ってくれないんだもん」
彼女は小さな口を尖らせて、大きな瞳をうるうるさせていた。
「んなことないって、行こ」
彼は小さな彼女の小さな肩に腕を回して保健室から出ていった。
一人になると、握っていたペンが指からスルリと抜け落ち、床にコロコロと転がった。
あー、拾うのめんどくさ。
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