イタミ

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あと数歩。 キャー、どうしよう。 胸の高鳴りが最高潮まで登りつめて、呼吸困難になりそうだ。 ――スッ。 風を切る音が聞こえた気がした。 え? チラチラと彼を気にする私に対して、彼は私の存在などまるで目に入っていないかのように、私の横を通り過ぎていった。 シカト……? 一瞬にして頭の中が真っ白になる。 ジェットコースターの頂上にいるかのように高ぶっていた心は、一気に急降下をはじめる。 高揚して弾んでいた胸のドキドキも、今では違う意味での嫌なドキドキに変わる。 もしかして、私に気付かなかったのかな……? はは、流石にそれはないよね。 前から生徒とは違う白衣を着た私が歩いて来れば、嫌でも目につくはずだ。
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