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「んー、別に普通だよ?どうしたの?」
「そっか、それならいいのよ、最近彼女の話を聞かないから、上手くいってるのかなーと思って」
嘘八百が口から出た。
彼は、自分から彼女の話をしたことはない。
いつも私が彼女の話を持ち出して、それに彼が答えているだけ。
「彼女とは変わりないよ」
彼が目を細める。
「なら安心だわ」
何が安心なんだか、自分で言っていて意味がわからないし。
聞かなきゃ良かった、と今更ながら後悔した。
きっと私は何かを期待して、この質問をしたんだ。
もう別れたよ、とかさ。
往生際悪すぎだし、私。
――「失礼します」
その時、保健室の扉が開いたと同時に、一人の女子生徒が入ってきた。
「紗耶香……?」
彼は、驚いた様子で彼女の名前を呼んだ。
あ。
彼女だ。
胸がドクンと嫌な音を立てた。
「どうしたの?こんなとこに来て、具合でも悪いのか?」
椅子から立ち上がると、すぐさま彼女の元へ足早に向かい、心配そうに彼女の顔を覗き込んでいる。
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