第11話

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「お別れ会?」 「自殺したんだよ、三か月前に。それで葬儀には集まれないやつが多かったから、先週に改めてお別れ会をやった」 「……仲良かった人なの?」 「ああ、そうだ」壮真の声のトーンが、壮真がどれだけその故人と親しかったかを物語っていた。夜の高速道路は、人の気配を感じるには最適の場所だ。 「幼馴染だった」 「……もしかして、この前言ってた、一緒に詩を書いてた人?」何故かその記憶が唐突に浮かんできて、絢人は壮真に訊ねた。 「そうだよ。そいつの書いた詩が、俺は好きだった。……そいつは、すごく頭が良いやつでな。成績はまあ俺のほうが上だったけど、それはあいつが試験のための勉強に興味がないせいで、数学とか、俺にはさっぱりわからない問題もあいつはすらすら解いてた。繊細なやつで、詩だけじゃなくて、絵を描くのも上手くて美術の先生にも可愛がられてた、なんていうか、持っている資質がどれも最高なんだ。でも、やつが何故か持ってないものがあって、俺にはそれがどうしてか理解できなかった」 「……その人は何を持ってなかったの?」 「自信とか、要領とか、意志とか…社会で生きてくのに大事なもんだよ」 「自分に自信がない人だったということ?」 「別におどおどしてるやつじゃなかったんだ。どっちかと言うと明るくて、皆の中心にいるようなやつだった。でも欲がないというか、俺には、やつが肝心なところで踏ん張れないように見えた。さっきも言ったようにやつは頭が良かったから、受験の時だって勉強さえすればどこの大学にも行けただろう、でもやつは何もせず推薦で地元の大学へ入った。俺のいた高校なら誰でも行けるようなところだった。絵を描いていてもそれをコンテストに応募しようとか、売り出そうとかは全くしなかった。詩を書きためて発表しようとかも。……それで、大学を卒業してからはアルバイトで生計を立ててるっていう話を友達から聞いた」  絢人はフロントガラスの奥を見つめながら、壮真の話をじっと聞いていた。 「どうしてだろうって昔からずっと思ってた。あいつは俺より良い人生を、有り余るほどの才能を生かした人生をどうとでも送れるはずなのに。…でも俺は何も言わなかったよ。高校を卒業してからは会うこともなくなっていたし、俺は自分の人生をどうにかすることに必死だったから。それで先日、やつが自分で命を絶った、っていう知らせが来た」
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