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「元々、幼馴染だったし、一番の親友だった。でも高校に上がってから、あいつが俺のことを好きだって言いだしてな……」
少し躊躇ってから、壮真は先を続けた。
「俺はそれを受け入れた。あいつが求めるような関係も持った。でも俺はたぶん、あいつに恋愛感情を持ってるわけじゃなかった。大学で俺が上京して、自然消滅した感じだ」
「……つまり一番仲の良い友達で、セックスもした関係ってこと?」
「そうだな」壮真はフロントガラスを見つめたまま、そう言った。
「そっか」絢人は頷き、それから今壮真から聞いたことを理解し、自分なりに解釈しようとした。
「俺さ、あんたのこと好きだよ。こうやってあんたと一緒にいると楽だし、セックスの相性だって悪くないと思うんだ。俺達、最高の友達でセックスフレンドになれるんじゃないかな」それは絢人の、壮真への親愛を表す精一杯の告白だった。何も言わない壮真に焦れて、絢人はさらに言い募った。
「そういう関係は得意なんだ。ていうか、俺はそういうのしか求めてないし」
車内を沈黙が満たす。絢人がそれ以上の言葉を探しあぐねていると、ようやく壮真が口を開いた。
「そうだろうな」
どういう意味だろうか、と絢人が迷っていると、続けて壮真の声がした。
「高速降りるぞ。アパートまで送るから、道順を教えてくれ」
壮真は絢人をアパートの前まで送ってくれた。絢人は車を降りるとき、壮真にキスをした。それは壮真への先ほどの告白のあかしでもあったし、今夜泊まって行かないかという無言の誘いを忍ばせたものでもあった。しかし壮真はキスを受け止めたものの、彼の方からキスを返してくることはしなかった。
絢人は気まずい思いをして、別れの挨拶をした。
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